名も無き歌

 

 

桜の莟が解ける頃

わたしは深く傷ついた

昔をただただ想っても

人は道を行き交うばかり

 

朝の微かな並木

淡い色に染まる

寂しさは超えられないけれど

それでも生きるんだ

 

流れる時間に身を任せて

昨日と明日に埋もれても

またもう一度笑うから

お願い あなたの為に泣かせて

 

 

 

 

道端はびこる雑草は

誰にも見られず踏まれてく

儚いさだめを思っても

季節は待たずに進むだけ

 

あの覚悟、約束も

きっと確かじゃない

形なきものだけを信じる

あなたの弱さは

 

光を拒んで影を見る

不安と恐怖に包まれても 

またもう一度歩くから

お願い こんなわたしを赦して

 

 

 

「叶わない思いなら 価値はないのかな」

何も言わず ただ微笑んだあなたは 涙を拭う

 

 

 

忘れることが優しさだと

あなたがわたしに言うのならば

わたしはあなたを忘れよう

さよなら わたしは未来(さき)へ行かなきゃ 

 

 

 

桜の花弁が眠る頃

わたしは別れの空を仰ぐ

あなたがわたしを忘れても

お願い あなたの傍に居させて

あなたの為にうたう 名も無き歌